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エル・プリメロの現在~ゼニス:エル・プリメロ Episode 04~【ムーブメント列伝】

Written on 05/13/2016   By   in 時計相場

1984年、ゼニスはシャルル・ペルモ氏の「功績」を元に、エル・プリメロの生産ライン復活に向けて動き出しました。

耐震装置をそれまでのインカブロックからキフショックに改め、さらにコラムホイールにレバーを抑えるS字型のキャップが付けられて、クロノグラフの作動がより安定したものとなった新しいエル・プリメロは、キャリバー400と名付けられ、1987年には市場に復帰を果たします。

当時ゼニス唯一の機械式ムーブメントとして、社運を賭けて投入されたエル_・プリメロは、機械式時計復権の気運が高まりを見せる市場において、多くの時計ファンを喜ばせることになりました。

そしてもちろん、ロレックスはじめハイクラスの自動巻クロノグラフを求めるウォッチメゾンたちにとっても、朗報であったことはここに繰り返すまでもないでしょう。

その後、エル・プリメロから自動巻機構を取り外して手巻きに改めたキャリバー420、通称プライムをはじめとして、かつてエスパーダと呼ばれたキャリバー3019PHFをリメイクしたフルカレンダー搭載機、キャリバー410等、様々な派生機も作られるようになります。

現在でも中古市場にて多大なる人気を誇り、現行モデルにまで影響を与え続けている1987年初出の名品、レインボー・フライバックに搭載されたフライバック機能付きのキャリバー405は、全てのクロノグラフファンにとって、特に印象深いものと言えるでしょう。

1998年、ゼニスはエル・プリメロの脱進機に初めてメスを入れました。

ゼニスのエンジニアたちにとって永遠のテーマと言える、エル・プリメロが持つハイビートへの最適化に向けてアンクル、ガンギ車、4番車を設計から改め、従来のものとの区別のためにキャリバー400Zという呼称を与えました。

そしてその翌年、ゼニスはLVMHグループに参加。

ブランディングのプロ集団であるLVMHによって、ゼニスはそれまでの勤勉なエンジニア集団としてのイメージから、突如としてアバンギャルドでラグジュアリーなハイエンド・ブランドへと変貌を遂げてゆきます。

しかしエル・プリメロが常にコレクションの中核を成すことに変わりはなく、地板の一部をスケルトナイズすることで、文字盤側からもテンプの紡ぎ出すハイビートを可視化する等、エル・プリメロの存在をより際立たせる試みが重ねられました。

2000年代に入りますと、トゥールビヨンやスプリットセコンドといった複雑機構搭載機も多く作られるようになり、そのムーブメントの複雑化とともに、古いファンから見れば、過剰とも思えるほどの華やかな外装を纏(まと)ったモデルも多くリリースされるようになります。

そして2009年。

エル・プリメロ40周年記念モデルとして登場した復刻モデルは、1969年発売のオリジナルのエル・プリメロ搭載機のエッセンスを前面に押し出しながらも、現代的ウォッチメイキング技術を駆使した極めて高い完成度を持つものであり、静かに始まっていた復刻時計ブームにも後押しされて大成功を収めます。

以降、ゼニスは原点回帰を目指し、落ち着きを取り戻すことになりますが、エル・プリメロの進化は、現代に繰り返される様々な技術革新によって、さらに加速を続けていると言って差し支えないでしょう。

たとえば2010年に発売された、エル・プリメロ ストライキング10th。

フドロワイアント機構とシリコンパーツを使用することで、エル・プリメロの最大の特徴である1/10秒を運針によって表現することを可能にしたこのモデルは、エル・プリメロにとって最大の進化と言える、シリコンパーツの本格投入の布石となったと言えるでしょう。

1987年に復活したキャリバー400の部品点数は280点、対して現行のベーシックキャリバー400Bは326点。

この時計史上最も魅力的な自動巻クロノグラフは、現在も変わらず、ゼニスの勤勉なエンジニアたちによって日々進化を続けています。

36,000振動/時のハイビートが生み出すすばらしい精度安定性、1/10秒まで計測可能な、コラムホイール・水平クラッチ式クロノグラフ。

そしてその代償である、代表的な三針のムーブメントの約2倍に達するという強力なメインスプリングのトルク、これを巻き上げるには貧弱すぎる自動巻機構、ハイビートゆえの脱進機への大きな負荷。

ゼニスのエンジニアたちが全ての難問を解消し、完璧なエル・プリメロを作り出すのも、もうそう遠い未来ではないのかも知れません。